就労支援フォーラム2017、開催決定! 2017年12月3日(土)、4日(日)、ベルサール新宿グランド
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2017.06.13

「誰もが、当たり前に働いて生きていける」を体現 ――九神ファームめむろが取り組む“農福連携”のカタチ【前編】

(文:はたらくNIPPON!計画 取材班)

北海道は日高山脈の東、十勝平野中西部に位置する、芽室(めむろ)町。人口は約2万人、主要産業は農業・酪農というこの町で、2013年4月に開所した就労継続支援A型事業所「(株)九神ファームめむろ」が、他にはない農福連携を実現しているとして、広く注目を集めています。果たして、その理由とは? 『はたらくNIPPON計画!』取材班が、この目で確かめてきたので、レポートいたします!

町内初、農業・農産物加工メインの
労継続支援A型事業所として開所

芽室町は、町面積の約42%が農地、約40%が山林という緑豊かな環境もあり、酪農や畑作を中心とした大規模農業経営も盛んな地域です。スイートコーンや馬鈴薯、小豆などは道内有数の生産量を誇っています。

そんな芽室町で、町内初の就労継続支援A型事業所として開設したのが「(株)九神ファームめむろ」です。西日本を中心に弁当・総菜などの加工販売などを手掛け、障害者雇用の実績を持つ「(株)クック・チャム」(愛媛県)、「(株)クックチャムプラスシー」(福岡県)、「(有)みらいPLUS」(高知県)といった、道外3社の共同出資で誕生しました。

農業が盛んで、作付面積、収穫量ともに道内トップクラスの芽室町。町の中心部から車で20分ほどの距離に『九神ファームめむろ』の嵐山工場はありました。現在は、渋山工場との2か所で運営を行っています。

業務内容は「農業」と「自社生産物を活用した食品加工」の2本柱。地権者より3haの農地を借り受け、2016年であれば、メークイン、インカのめざめ、小豆などを収穫しました。ジャガイモであれば、自社工場で皮むきからカット、袋詰め、真空パック、スチーム加熱を行ったうえで、出資企業のクック・チャム、クックチャムプラスシーにほぼ全量を販売しています。

1日で600㎏ものジャガイモを加工
オペレーションにスキはない!

取材班が芽室町を訪問したのは4月下旬のこと。ジャガイモの加工の様子を見せていただけるとのことで、「嵐山工場」に向かいました。

衛生管理された工場内。サービス利用従業員の皆さんが、ジャガイモの加工に従事していました。

目に飛び込んできたのは、衛生管理が徹底された工場内で、作業服に身を包み働く、サービス利用従業員の皆さん。皮むき、芽取り、カットなど各パートにわかれ、おのおのが作業に取り組んでいました。

「多いと1日600㎏ものジャガイモを加工することも。出荷後は、全国76店舗のクック・チャムでポテトサラダとして使われます」と説明するのは、支援員の古御堂由香さん。他にも、大豆の五目煮や切り干し大根など、加工する農産物はたくさん。9時30分~17時の勤務時間(7.5時間勤務/月8日休)の間に終わらなければ残業することもありますが、皆さん責任感が高く、お互いに声を掛け合い、効率的に作業を進めているのが印象的でした。

山積みになったジャガイモを手に取り、次々と皮をむいていく皆さん。手際は良く、他のパートとも協力しながら作業を進めていました。

取材班も皮むきにトライしましたが、ピーラーを片手にスピーディにこなすのは大変…。すると、「こうやるとむきやすいですよ」とアドバイスしてくれたり、デコボコの少ないジャガイモを手前に置いてくれたり、日常でもこういったサポート体制が従業員の間で出来上がり、全体のスキルアップにつながっているようです。

カットしたジャガイモは、袋詰めしたのちに真空パック、スチーム過熱をして出荷。他にも大豆の五目煮など、つくる加工品は多岐に及びます。

農作業に関しては、近隣の元気な高齢者を中心に「農業サポーター」の協力を仰いでいます。「説明会を聞きに行ったところ、町のためになる、手助けしたい気持ちで参加しました」と話すのは、農場長の常山勝美さん。芽室町で大規模農場を経営する名士のひとりです。

「ジャガイモなら種イモの準備など、人手が必要な時は従業員の方に来てもらい、農業サポーターの指導のもと作業を行います。機械が使えないカボチャの場合、種まきから収穫まで手作業だから大変なはず。最初は戸惑う従業員もいましたが、いまは安心して任せています」

農場長の常山勝美さんをはじめ、農業サポーターが、普段の仕事の傍らお手伝い。作業の指導や、農薬の散布などをフォローし、彼らの協力なくして、九神ファームめむろの運営はままならならず、かけがえのない存在です。「当初は種まきができなかった授業員も、いまでは立派に作業できるように。そんな成長を見守れるのも楽しみです」(常山さん)


“出口”を確保することで
事業を安定継続することが可能

九神ファームめむろの特徴は、農業に加工作業もプラスすることで通年雇用を可能にしたこと。出資企業に農産物加工品を卸すことで高い収益性も確保しています。その結果、サービス利用従業員の給与は月に約11.5万円と、最低賃金を保証する高い水準。当初に掲げたスローガン「誰もが、当たり前に働いて生きていける」を体現すべく、障害者雇用と自立を両立させています。

 

支援員の古御堂由香さん。「九神ファームめむろができるまで、障害者本人、ご家族ともに、働いて十分なお金をもらえるという意識はなかったと思います。ところがここに来て、それなりの収入を得ることで、自立や将来の生活について考え、行動を起こす従業員も。農業に加工事業も付加することで実現できました」(古御堂さん)。

給与が入れば仲間同士で遊んだり、貯金、生活費に充てるなど様々なようですが、仕事に従事して対価を手にするという点で、九神ファームめむろのワークスタイルは、一般的なフルタイム勤務と変わりません。「雇用時にはしっかりと確認し、理解した人しか採用しませんし、規則に準じて働くのは当たり前のこと。日中活動をメインに考えるなら、他の福祉事業所を選ぶなど、我々が働き先の選択肢のひとつになればいいと考えています」(古御堂さん)

これまでに6名が一般就労へ移行
障害者の働く環境に大きな変化が!

開所当初は9名だったサービス利用従業員の数は、いまや20名に増え、これまでに計6名が一般就労へ移行。2015年4月から職員として採用された川本明宏さんは、元障害者従業員です。

元サービス利用従業員で、現在は職員として活躍する、川本明宏さん。自分を変えたい一心もあり、九神ファームめむろで働き始め、2年前からは一般就労へ移行しました。「作業だけではなく、みんなのこともよくわかっているので、とても頼りになります」と、古御堂さんからも太鼓判。信頼を寄せています!

「以前は別の福祉事業所で週2日ほど働いていましたが、労働の実感や対価はあまりなく…。そんな時に九神ファームめむろの話を聞きつけました。農業体験は初めてでしたが働き甲斐があり、職員採用の話をいただいた時も、チャレンジしたいと思い、いまに至ります。やることはたくさんで忙しいのですが、日々は充実しています」と打ち明けました。

他にも、町役場や近隣の国民宿舎、スーパーなど、一般就労先は多岐に渡ります。九神ファームめむろの取り組みが町内に知れ渡り、企業などが障害者雇用に前向きになったことが影響しているようです。

このように、障害者の自立を実現している、九神ファームめむろの取り組み。「働き、生きる」という当たり前のことを具現化した農福連携といえますが、今日に至るまでは、紆余曲折もあったようです。次回【後編】では、誕生までの経緯や、さらなる活動、今後のビジョンについて、キーパーソンの声をお届けします。

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